天気予報をチェックするのは日常の一部ですが、その背後にはどんな科学と技術が隠されているのでしょうか?
今日は、気象予報士の視点から、天気予報の裏側に迫り、気象マニアの皆さんにその複雑な世界を解き明かします。
気象予報の歴史と進化
気象予報は、古くは農業社会の根幹を成す重要な情報源でした。
今では様々な手段で食料を手に入れることができますが、飢饉への脅威を回避するため、農作物への影響を重要視していたのです。
天気予報の必要性は農業から始まったということですね。
しかし、気象予報の歴史は、単なる経験則の活用から、科学的な方法による予測へと大きく進化してきました。
今日に至り、気象学の進化とともに、高度なテクノロジーが予報の精度を飛躍的に向上させています。

データの海を操る
高度な気象解析モデルは、気象衛星や気象レーダーからのデータを駆使し、地球規模の気象現象を解読します。
これらのデータは、複雑な気象モデルに入力され、未来の天気を予測するためのシミュレーションに使われます。
気象衛星画像(可視・水蒸気・赤外)、気象レーダー(雨雲)、アメダスデータといった観測データ
を初期値とし、数値解析(シミュレーション)を行います。



予報の精度を高める秘密の技術
最新の数値予報モデルは、気象予報の精度を劇的に向上させています。
これらのモデルは、大量の気象データを処理し、様々な気象条件を予測します。
しかし、モデルが出力する情報をどのように解釈し、予報に反映させるかは、予報士の熟練した技術と経験に依存しています。
大前提として、モデルの出力結果を鵜吞みにはできないのです。
たとえば自分のいる位置の、2時間先の{雨雲}でさえも、70%ほど「補足」できていれば良い方でしょう。
予報を出した時(雨があるよといった時)の的中率に関しては95~97%。一日を通すと80%前後にはなります。よく見る精度検証結果は的中率ですが、実生活に最も関与するデータではないかもしれません。
データの出典 天気予報検証結果:気象庁HPより
そのため、気象予報士が予報の精度を上げるには、モデルの特徴を知っておく必要があります。
モデルの特徴は、{直線的な(移動や強さの)予測を出しやすい}{直近で特異な現象があれば傾向を引き継ぐ}などがあるでしょう。
では、どのように予報の精度を上げるのか。
パターン1:シミュレーション結果を修正していく。
モデルの出力結果を把握し、
注目すべき気象要素をモデルのズレを加味しながら複数のパターンで組み立てていき、一つのシナリオと可能性のある注意事項をまとめていく。
パターン2:現状を把握し、シミュレーション結果に当てはめていく
過去の類似実例や観測結果から現状を把握し、シミュレーション結果の理解深度を深めます。
パターン3:独自モデルで再修正
再度、独自のモデルを用いて、解析の練度を上げていく。
不足している情報を補完したりし、ニッチな情報も対応できるようにする。
他にも様々なパターンがありますが、王道を挙げるとしたらこのようになります。
ケーススタディ:台風の進路予報プロセス
台風の予報では、予報士は台風予報のために、複数のモデル出力を比較検討し、最も信頼性の高い情報を提供します。
メインシナリオは(防災情報の不統一化による混乱を防ぐために)気象庁の発表する進路予報です。
しかし、台風ほど要注意な現象となると、様々なパターンを考慮する必要があるため、外国の気象モデルの結果も検討材料にします。
外国のモデルとは、主にヨーロッパのECMWF(欧州中期予報センター)、アメリカのGFS(NOAA Global Forecast System)があります。
なぜ、複数のモデルが必要かというと、観測データの初期値誤差などによって、同じモデルでも予測結果が大きく変わる可能性があるからです。
(大気の運動にある特徴的な性質「初期値の小さな差が将来大きく増大する」というカオス(混沌)的な振る舞いが起こるためです。)

気象予報士の一日
では、気象予報士の仕事は一日に何を含むのでしょうか?このセクションでは、実際の予報士の一日に焦点を当て、彼らがどのようなデータ分析、会議、報告作業を行っているのかを紹介します。
朝は早い。
気象予報士の夜明け前から始まる一日。
最初のタスクは、前日からの気象データと最新の衛星画像をチェックすること。この情報を基に、その日の天気動向を初期分析します。
(HBC:専門天気図、Yahoo!JAPAN天気・災害:衛星画像)
ミーティングでは、同僚たちとデータの解釈を共有し、予報の一貫性を確保します。
この初期分析をもとに、地域ごとの詳細な予報を作成。
気象予報士は、気圧配置や風のパターン、気温・湿度などの要素を考慮しながら、予報モデルの出力を解釈し、予報文を作成します。
〈関東甲信の天気はtenki.jpより〉
予報の更新と公表の準備が必要となります。
特に、緊急を要する天気の変化があった場合、迅速な情報更新が求められます。
『00,06,12,18UTC(日本時刻:9時,15時,21時,3時)には大きな情報更新があるため、緊急でなくても予報のアップデートを繰り返していきます。』
また、メディア向けのプレスリリースの準備や、公共の安全を守るための警報の発令も、予報士(気象業務許可のある法人)の重要な役割です。
夕方には、次の日の予報準備に向けて、再びデータ分析に戻ります。一日の終わりには、予報の精度を検証し、何がうまくいったか、どの予測が外れたかを評価し、明日以降の予報の糧とします。
この連続したサイクルを通じて、予報士は常に最高の予報を目指しています。
おまけ:気象予報と気候変動
気候変動は、気象予報の世界に革命をもたらしています。
気象予報士は、過去のデータに基づいて予測を立てていましたが、気候変動により、過去のパターンが未来の予測に直接適用できないことが増えています。
気象に携わる研究者たちは、気候モデルと天気予報モデルを組み合わせることで、新しい気象パターンを理解しようとしています。
極端な気象イベントが増加する中、気象予報士は、よりリスクの高い天候を予測し、公衆の安全を確保するために、新しい技術と手法を取り入れています。
また、長期的な気候予測と短期的な天気予報の間のギャップを埋めるために、季節予報や年間予報の精度を高める研究も進められています。
気候変動が進む中で、予報士の役割はますます重要になり、彼らの予測は社会の持続可能性を支える基盤となるでしょう。
問題 気象予報士試験 一般知識編 第6回(H8 第一回 参考問題)
次の①~③の三つの記述の正誤を答えよ。
① 予報業務の許可を受けた者は、当該予報業務を行う事業所ごとに、必要数の、専任の気象予報士を置かなければならない。
② 予報業務の許可を受けた者は、当該予報業務のうち現象の予想については、気象予報士に行わせなければならない。
③ 予報業務の許可を受けた者は、当該予報業務の目的および範囲にかかわる気象庁の警報事項を当該予報業務の利用者に迅速に伝達するように努めなければならない。
・
・
・
解答:すべて正しい
一日当たりの現象の予想を行う時間が8時間以下なら2人以上、8時間を超え16時間以下なら3人以上、16時間を超えれば4人以上の選任の気象予報士が必要です。
気象予報士試験HP 参照
トリビア 昭和の予報士は未来予知者?
かつて、昭和時代の日本では、気象予報士はまるで未来を予知する能力があるかのように見られていました。
例えば、「明日は傘が必要ですよ」と言ったら、その通りに雨が降ることが多かったんです。
もちろん、これは科学的な分析に基づく予報ですが、その精度の高さには多くの人が驚いたそうです。

コメント